コンサートの聴衆はステージ裏の様子を見る機会はほとんどありませんが、出演者控室は、アーティストの個性が見られる興味深い場所でもあります。プロのオーケストラの楽屋を覗いてみますと、難しいところをさらっている人、軽食をとっている人、仮眠している人、しゃべっている人、着替えている人、最近は少なくなりましたが、トランプなどや将棋などのゲームをしている人もいます。それぞれコンディションを整えるための大事な場所です。

一般的なクラシックコンサートが中心の大ホールの場合は、ステージの裏側に10室前後の大小の楽屋が備えられています。個室の広さはほぼ同じで6畳から10畳程度、ソファーや鏡などの調度品やシャワーが備えられていますが、特に凝ったものではなく実用品が多いようです。

控室はステージマネージャーが割り振りを決めますが、一般的にステージに一番近い、比較的豪華な部屋が指揮者、コンサートマスターの部屋、続いてソリストの部屋で、これらはすべて個室になります。一番遠いのが、オーケストラとコーラス団員用の部屋でいわゆる大部屋になります。大部屋は「女性」、「男性」、「喫煙」、「禁煙」などに分かれます。部屋はたいがい真ん中に大型の横長でテーブルが置かれていて、周りの壁に鏡と化粧用品を置く短いテーブル、そして衣装掛けが備えられています。

伝統と格式を誇る欧米の場合では、控室にも指揮者・ソリストとオーケストラ・コーラスで歴然とした格差をつけている所もあるようですが、日本の場合はほとんど格差というのはなく、きわめて平等に和気合い合いといった雰囲気です。

興味深いのは、どのホールもオーケストラや、コーラスの団員の部屋はホールの入口付近にあるということです。これはコンサートが終わってすぐに帰れるようにするためなのか、設計者に尋ねてみたいものです。