一般の楽器の場合は、演奏する人自身が楽器の管理に気を配り、音の調整や調律を行っています。ところが、ピアノ
の場合は、複雑で微妙な働きを持ついくつかの機構や機能が組み合わされていて、ピアノについて熟知した専門家である調律技術者が楽器の健康状態を診断し、問題があれば適切な処置をする必要があります。
その調律を専門にする技術者が調律師と呼ばれます。調律師の仕事は、基本的な音程を調整する「調律」のほかに、もっともよい状態で音を発生させるための整備をする「整調」、そして演奏者のイメージ通りのデリケートな音色を作る「整音」の3つがあります。
ピアノ調律師になるのにはピアノ調律科のある音楽大学や専門学校、楽器メーカーが運営する養成施設などで基礎的な知識と技術を学ぶのが一般的です。
ただし調律師に必要とされる基礎技術の習得や聴覚は、手先の鋭敏性が重要なポイントとなるため、年齢的には、感覚や感性がさらに伸びる可能性が残されている25歳ぐらいまでが限度になっています。卒業後は、楽器メーカーや販売店、修理工房、個人経営の調律師事務所などに就職します。
ピアノ調律師としての実力を認定する制度や国家試験は特にありません。従って、資格や免許がなくても調律師になることは可能です。現在では、ピアノ調律師
として生計をたてている人の数については正確なデータはありませんが、会社に所属している調律師や、自営業者、フリーを合わせても6,000人程と推測されています。
調律師の年収は所属する会社により異なります。フリーの場合、グランドピアノ調律料金は1件につき1万5000円程度。ベテランともなれば月に50件以上の仕事をこなし、年収は800万円を超える人もいるそうです。
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